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ありがとう、ギャリー

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先日、フランキー・マカヴォイのヘッドコーチ就任と併せ、ポール・ギャラガーのコーチ就任が発表されました。これに伴い、ギャラガーはプロ選手を引退することとなります。

 

ギャラガーは2007年、そして2013年から2021年までの期間PNEでプレー。それまでの間に色々な出来事がありました。正確無比のキック、独特なフォームのPKで何度も特別な瞬間を生み出してきました。当記事では、まず時系列順にそれらを振り返っていきます。

 

 

「ギャリー」との思い出

2007/08

当時22歳、ギャラガーは初めてPNEに加入。ブラックバーンで18歳の頃から出場機会を勝ち取り、ローン先のストーク(チャンピオンシップ)では二桁得点を記録。しかしノースエンドでは僅か1得点、ローンは冬で終了。この時、後に再びノースエンドに加入し、クラブの歴史に残るようなプレイヤーになるとは誰が想像したでしょうか。

 

 

2013/14

レスターで全く出場機会を与えられていなかったギャラガーは、2013年10月、ノースエンドにローンで復帰します。ノースエンドは前2シーズン、リーグ1で15位、14位と低迷。グレアム・ウェストリーの下でチームは迷走し、2000年代何度もチャンピオンシップでプレイオフに出場、PL昇格を争ったクラブにしては恥ずかしい位置にいました。サイモン・グレイソンが就任しようやく浮上の兆しを見せ、プレイオフ進出を狙える位置につけていました。

挨拶代わりのハットトリック

加入後二戦目、「ギャリー」は早速その実力を存分に発揮します。非常に落ち着き払ったフィニッシュを見せ、ハットトリックを決めました。

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ノースエンドはプレイオフ進出を決め、ロザラムとの準決勝に臨みます。ファーストレグはジョー・ガーナーのスーパーボレーで1-1の同点に。迎えたセカンドレグ、ギャラガーはフリーキックから先制点を決めるも、PNEは立て続けに失点し敗戦。来季もリーグ1で戦うこととなりました。


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このシーズンギャラガーはトータルで10得点12アシスト。中心選手となり、リーグ1のレベルには収まらない類まれなる才能を発揮しました。


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2014/15

レスターとのローン契約を延長しクラブに留まったギャラガー。このシーズンはさらなる活躍を見せることとなります。

ブラモール・レーンでの魔法

前シーズンの雪辱を果たすべく昇格を争っていたノースエンド。しかし年末から突如不調に陥り、カップ戦含め6戦勝ちなしと苦しみました。

ここでチームを救ったのはポール・ギャラガーの右足でした。フリーキックの名手、期待されたようにトップコーナーをとらえ、久々の勝利をもたらしました。

チームはここから連戦連勝。リーグ戦での無敗は最終節まで続き、最終節を前にチームは2位をキープしていました。

しかし悪夢の「コルチェスター・アウェイ」。プレイオフに回ります。

2度目の正直

PNEはチェスターフィールドとの準決勝に勝利し、遂に決勝の舞台へ。やはりここでも「ギャリー」の右足が輝きを放ちます。

 前半開始早々、ギャラガーの正確無比なキックはベックフォードのもとへ。試合の流れを引き寄せる先制弾を奪いました。

 さらに2点目を奪います。ジョン・ウェルシュのタックル、ギャラガーのクロス、ハンティントンの冷静なフィニッシュ。長らく語り継がれる美しいゴールです。

 

ギャラガーは前半で負傷退場してしまいます。ピッチを去る際には非常に悔しそうな素振りを見せていました。

 

4-0とリードし、昇格をほぼ手中に収めた状況で試合は終了間際に。ギャラガーは感極まっていました。彼がどれだけクラブのために懸命にプレーしてきたか、この昇格が彼にとってどれほど嬉しいものだったかが伝わってきます。クラブの誇りをかけてプレーするその姿勢こそ、ファンから愛された所以です。

 

念願の昇格を掴み取ったこのシーズン、ギャラガーはトータルで13得点21アシストを記録。チームの大黒柱として大車輪の活躍を見せました。

 

2015/16

チャンピオンシップへの船出

チャンピオンシップ復帰を果たしたノースエンド。過酷な舞台でシーズン初勝利をもたらしたのも、やはりギャリーでした。

第2節MKドンズ戦。落ち着き払って相手をかわしフィニッシュ。これがノースエンドのチャンピオンシップ復帰後初ゴール、そして初勝利に繋がる決勝点となりました。

 

その後長らく勝利のない期間が続き、降格圏に沈むものの、またしてもギャラガーがチームを救います。得意のフリーキック、そして角度のないところから実に爽快なゴール。個の力で現スリーライオンズのニック・ポープを破り、久々の勝利をもたらしました。

最終的にPNEは11位でフィニッシュ。プレイオフから上がってきた昇格チームにしては、十分すぎるほどの結果です。ギャラガーは41試合に先発出場。このシーズンの奮闘あってこそ、今があるでしょう。

 

2016/17

前3シーズンと比べて出場機会は減ったものの、このシーズンもファンの記憶に残る瞬間を創り出しました。

キックの名手

絶好調ハダースフィールドを迎えた第13節。この試合はまさにギャラガーの独壇場でした。

トム・クラーク、アレックス・バプティストの頭に質の高いボールを供給。最後は自らも決め、ボックス内に常に危険なボールを送り込む能力を改めて存分に発揮しました。

 

 

ダービーマッチでの勇気 

第38節、ブラックバーンとのダービーマッチブラックバーンは残留争いのさなかにありながら好調で、この試合も後半ロスタイムまでリード。ノースエンドは苦戦を強いられていました。

迎えた後半ロスタイム、1本のパスが局面を打開します。ギャラガーのパスはブラックバーンの選手4人をすり抜け、マクギーディの同点弾。勇気あるパスが、劇的な同点弾を生みました。今でも多く語られるゴールです。

ノースエンドは11位でフィニッシュ。チャンピオンシップでの地盤を固めた一年となりました。

 

2017/18

新たな時代へ

サイモン・グレイソン監督がサンダーランドに引き抜かれ、後任にアレックス・ニールが就任。転換期を迎える中、ギャラガーは引き続き重要な役割を果たします。グレイソン時代は前目のポジションを任されることも多かったものの、完全に中盤の底に定着し、セットプレイは勿論、正確なロングパス、そのクリエイティビティでチームに貢献し続けました。

ノースエンドは旋風を巻き起こし、序盤から常にプレイオフ争いに参加。しかし大事な終盤戦、3連敗を喫してしまいます。もう後がない、そんな状況で迎えたリーズ戦、ギャラガーが重要な活躍を見せます。

0-1のビハインドで迎えた後半、ギャラガーはペナルティを蹴り込み同点弾。さらにその直後、マグワイアにピタリと合わせるクロスで逆転弾を演出。勝利へ導きました。

ノースエンドはその後負けなしで突っ走り、最終節までプレイオフの可能性を残すもあと一歩届かず。しかしこのシーズンの躍進は、リーグに大きなインパクトを与え、ノースエンドの復活を印象付けました。

 

2018/19

怪我人が続出し苦しんだこのシーズン。しかしギャラガーは1年通してフル稼働し、年齢を感じさせない活躍を披露しました。

”Brilliant Save By Gallagher!"

第16節、アウェイでのイプスウィッチ戦。72分から途中出場し、交代直後のフリーキックを叩き込んで同点弾。しかし直後、ゴールキーパーのクリス・マクスウェルが不用意な飛び出しで退場してしまいます。交代枠は既に使い切っていました。

GKユニフォームに着替え、グローブをはめゴールマウスに向かったのは…

そう、ポール・ギャラガーでした。

ゴールキーパーとなったギャラガー。さすがのキック精度で質の高いボールを最後尾から供給しました。そして88分。イプスウィッチの強力なミドルシュートが枠に飛びます。なんとギャラガーはこのシュートを弾き飛ばす見事なセーブ!試合はこのまま終了。なんとなんと無失点に抑え、貴重な勝ち点1をもたらすことに成功しました。

プロキャリア通算100ゴール目

アウェイ・ミドルスブラ戦。ギャラガーの記念すべきプロ通算100ゴール目は、なんとも彼らしい印象的なゴールでした。

フリーキック、見事に巻いて、ネットに入れてみせました。実に華麗な、ギャラガーのテクニックを象徴づけるゴールです。

このシーズンギャラガーはリーグ戦40試合に出場。ルーカス・ンメチャに次いでチーム内では2番目の数字でした。34歳という年齢ながらフル稼働し、チームの中心として活躍したギャラガーにはファンから”Like A Fine Wine"といった賛辞が送られました。

 

2019/20

錆びつかないクオリティ

第3節ウィガン戦。シーズン開幕後早速、素晴らしいクオリティを見せてくれました。

ゴールから左45度でのフリーキック、直接狙うには少々厳しいかと思われたものの、トップコーナーを捉えてみせました!本人は「クロスだった」と言うものの、素晴らしいゴールであることに変わりはありません。

”We Are Top Of The League!"

チームは前半戦好調を維持し上位をキープ。勝てば首位に立つ状況で、第15節、ザ・ヴァレーでのチャールトン戦を迎えました。

0-0で迎えた後半、ジェイデン・ストックリーがペナルティをゲット。スポットに向かったのは勿論、ポール・ギャラガーでした。

ゴールに背を向けた状態で後ろへ歩き出し、ペナルティアーク付近で振り向いて走り出す。走り出して力強く蹴ったボールはネットの左隅へ吸い込まれていきました!

このPKが決勝点。ギャラガーは、ノースエンドを2006年以来となるチャンピオンシップ首位へと押し上げました。

 

Last Goal

2月のホーム・ハル戦。前半をビハインドで折り返す苦しい展開も、同点のチャンスとなるペナルティを獲得。蹴るのはもちろん、ポール・ギャラガー。

いつものフォームでボールに向かい、力強く蹴り込んでみせました。在籍期間中ペナルティを外したのはたったの2回。彼が蹴るペナルティには、いつも安心感がありました。

結果的にこれが、プロキャリアでの公式戦最後のゴールとなります。

ノースエンドはこのシーズン常にプレイオフ圏内に位置し、チャンピオンシップ復帰以降最大のPL昇格へのチャンスを迎えていました。しかし未曾有の事態が世界を襲います。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックです。

リーグ戦が再開したのは6月。ファンのいないスタジアムで残り9試合のリーグ戦を戦うことに。ノースエンドは、流れに乗れず、プレイオフ圏内から転落してしまいました。

 

2020/21

ギャラガーは契約を1年延長。「ファンの前でもう一度プレーせずに、このフットボールクラブを去りたくなかった」と発言し、現役ラストイヤーとなるとみられていました。

300 Clubへの加入

ギャラガーはシーズン初頭、カラバオカップでのダービー戦に出場。これにより、ノースエンドでの通算300試合出場を達成し、クラブ歴代25人目の300 Clubへの加入者となりました。まさにレジェンドの証です。

2度目のノースエンド加入時は29歳で、キャリアのなかでは比較的遅めの時期でした。そこから300もの試合に出場したという事実が、彼のプロフェッショナルな姿勢を物語っています。

このシーズンは頻繁にコーチとしても活動。アレックス・ニール解任後は完全にコーチとなり、選手としてプレーすることはありませんでした。

コーチングスタッフのジャージを身にまとい指示を出す姿には、すでに指導者としての風格も感じられました。

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ノースエンドでの通算成績は313試合44得点69アシスト。この男を一言で表すなら、「レジェンド」。それ以外の言葉が思い浮かびません。

 

ギャリーはこれからもノースエンドに居続けます。そしてこれからも、ノースエンドと共にプレミアリーグ昇格を目指し続けます。本当に嬉しいことです。このクラブで、ギャリーがどのように指導者として成長していくか、楽しみで仕方ありません。

 

ギャラガーはランカシャー・ポスト紙に、こう語りました。

「疑いの余地もなく、私はサポーターの前でプレーしたいと思っています。」

「もう一度、観客で一杯のディープデイルで、あのトンネルからピッチに出て、プレイヤーとしての別れを告げたいと思っています。」

この機会が実現することを、心の底から願っています。もし実現したら、たとえ親善試合であろうが、ギャリーのラスト・ダンスをこの目に焼き付けないわけにはいきません。

最後に、ギャラガーがソーシャルメディアに投稿したメッセージを翻訳し、掲載します。

 

「ギャリー」からのメッセージ

「今日私は20年間の選手生活に幕を下ろし、正式にブーツを脱いでプロフットボーラーを引退します。」

「私はプレストン・ノースエンドブラックバーン・ローヴァーズストーク・シティプリマス・アーガイルシェフィールド・ユナイテッドレスター・シティという素晴らしいクラブでプレーしたこと、そして母国の代表としてプレーしたことに喜びを感じています。」

「ずっと無条件の愛、手引き、サポートを与えてくれた家族に感謝しています。」

「過去から現在に至るまでのすべての選手、スタッフに感謝しています。そして、長年良い時も悪い時も応援してくれたプレストン・ノースエンドファンの全てのサポートに特別な感謝をします。私にとってたいへん重要な意味合いがあるもので、本当に感謝しています。」

「近いうちにディープデイルで会えることを願っています。」

「私の愛するクラブで、フランキー(・マカヴォイ)を手助けするファーストチームのコーチとしてキャリアを前に進める機会を与えられたことを光栄に思い、そして感謝しています。」

「次の章に向けて、喜びを感じています。」 ギャリー

 

ありがとう、ギャリー。